日本の投資信託界の黒船ファンドともいうべき、楽天投信投資顧問とバンガードの最強タッグにより、楽天・バンガード・ファンド第4弾目の運用開始が決定となりました。
第4段目は楽天VYMともいうべき待望の「米国高配当株式」で、2018年1月10日より運用が開始される事がわかりました。
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2017年は日本の投資信託界においては革命ともいうべき大きな出来事が2つあり、そのうちの1つが、この黒船ファンドの襲来です。
→関連記事:【まとめ】米国株ETFと投資信託による実質的な米国株ETFの保有のメリットとデメリット
関連記事のとおり、これら2つの出来事により、ありがたい事に投資信託による投資がより身近なものとなりました。
手数料の高い米国株ETFを直接売買しなくても、特に楽天・バンガード・ファンドにより、低信託報酬ながら、日本円のまま実質的に米国株ETFを100円という小額から保有する事が出来るというメリットは、我々日本の個人投資家にとって非常に大きなものとなりました。
楽天・バンガード・ファンドでは既に以下の3本の投資信託が運用されています。
☆楽天・全米株式インデックス・ファンド
俗称:楽天VTI
信託報酬:0.1696%
参考:本家VTIの信託報酬0.04%
設定日:2017年9月29日
☆楽天・全世界株式インデックス・ファンド
俗称:楽天VT
信託報酬:0.2396%
参考:本家VTの信託報酬0.11%
設定日:2017年9月29日
☆楽天・新興国株式インデックス・ファンド
俗称:楽天VWO
信託報酬:0.2696%
参考:本家VWOの信託報酬0.14%
設定日:2017年11月17日
参考として各投資信託の本家ETFの信託報酬も掲載しました。
この事から見えてくるのは、楽天投信投資顧問のマージンです。
例えば楽天VTIの信託報酬である0.1696%から本家VTIの信託報酬である0.04%を引くと、差は0.1296%となります。
上述の3本の投資信託のマージンは全て0.1296%となっている事から、楽天VYMも同様と考えられ、本家VYMの信託報酬が0.08%である事から、楽天VYMは0.1296%分を乗せた0.2096%の信託報酬と予想されます。
以下、情報をまとめます。
☆楽天・米国高配当株式インデックス・ファンド
俗称:楽天VYM
信託報酬:0.2096%(予想)
参考:本家VYMの信託報酬0.08%
設定日:2018年1月10日(予定)
実は既に以下の様なS&P500配当貴族指数(配当込み・円換算ベース)への連動を目指す米国株式配当貴族インデックス・ファンドが既に運用がされています。
☆SMT 米国株配当貴族インデックス・オープン
信託報酬:0.594%
設定日:2016年8月30日
☆野村インデックスファンド・米国株式配当貴族
信託報酬:0.54%
設定日:2017年1月10日
☆野村インデックスファンド・米国株式配当貴族・為替ヘッジ型
信託報酬:0.54%
設定日:2017年1月10日
では、なぜ楽天VYMに対して「待望」とタイトルに書いたかといいますと、上述の3本の米国株式配当貴族の投資信託の信託報酬に注目すると、信託報酬がお高い事がわかります。
ここでは指数の指す意味や定義は便宜上省きますが、みなさんにお伝えしたいのは、信託報酬はリターンを得る際の足かせとなると考えられるので、なるべく安い(低い)方がありがたいという事です。
その様な観点から考えると、米国株式の高配当ETFへの投資を考えていた個人投資家からすれば、やはり楽天VYMは待ち望んでいた投資信託といっても過言ではないでしょう。
さて、個人的には特に為替ヘッジがある場合、手間などコストが増えると考えられるので、やはりパフォーマンスに影響してくると考えられます。
よって個人的には投資信託やETF(上場投資信託/上場投信)の法律的な制度は別としても、為替ヘッジよりも、同じ対象指数であっても複数の投資信託に分散をさせる事が将来的なリターンを得る事につながると考えます。
それは複数の投資信託に分散させる事により、万が一の繰り上げ償還のリスクを分散させる事が出来るからです。
そして下落時は為替ヘッジよりも、むしろ待機資金を投入して積極的に買い増しの方が、指数の選別さえきちんと出来ていれば、ETFや投資信託によるインデックス投資においてはベターと考えます。
→関連記事:【配当収入】貯株によるETFの長期積立投資におけるリスク分散と注目点【不労所得】
少々脱線してしまいましたが、話を戻しますと、配当貴族よりも楽天VYMの方が、大雑把に見ても半分以下の信託報酬である事からも、私は楽天VYMに魅力を感じますし、今後が非常に楽しみな投資信託でもあります。
さて、ここでVTIとVYMの特徴を以下にまとめました。
☆VTI
重視:値上がり益(キャピタルゲイン)
構成株式銘柄数:3,626社
分配利回り(配当利回り):1.76%※1
運用開始:2001年5月24日
☆VYM
重視:配当/分配(インカムゲイン)
構成株式銘柄数:402社
分配利回り(配当利回り):2.94%※1
運用開始:2006年11月10日
※1 2017年12月28日現在
finance.yahoo.comより
VYMは「米国高配当株式」なので、インカムゲインを重視している訳ですが、下記のチャートから、キャピタルゲインも狙う事が出来るともいえます。
楽天VYMではなく、ETFとして直接VYMを保有している場合は、分配金に対して日本国内での確定申告時に収入によっては、外国税額控除により現地源泉徴収分を取り戻す事「も」出来ます。
→関連記事:【控除】1557 SPDR S&P500 ETFを中心とした外国税額控除の確定申告について【節税】
しかし、投資信託である楽天VYMとして保有している場合は、投資信託の都合上、日本の個人投資家が外国税額控除により、VYMの分配金に対する現地課税分を取り戻す事は出来ないと考えられます。
一方で楽天VYMが分配金を個人投資家に出さなければ、投資信託である事から、ファンド内で自動的に再投資をしてくれるとも考えられ、基準価額の上昇が考えられます。
なお、日本国内での課税はNISAなど非課税制度を除き、最終的に楽天VYMを売却した際に譲渡所得に対して課税がされる事となります。
さて、個人投資家の方が知りたいのは円建ての際に、どのようなパフォーマンスとなるのだろうかという事ではないでしょうか。
そこでバンガードのVYMの永遠のライバルといっても過言ではない、ブラックロックのHDVを参考にしてみたいと思います。
これらVYMとHDVは米国高配当株式ETFではあるものの、対象指数が異なることから、厳密には似て非なるものでもあります。
☆VYM
対象指数:FTSE ハイディビデンド・ イールド・インデックス
構成株式銘柄数:402社
分配利回り(配当利回り):2.94%※1
リターン1年間:15.92%※2
リターン3年間:10.28%※2
リターン5年間:13.42%※2
運用開始:2006年11月10日
☆HDV
対象指数:モーニングスター配当フォーカス指数
構成株式銘柄数:74社
分配利回り(配当利回り):3.18%※1
リターン1年間:9.35%※3
リターン3年間:8.36%※3
リターン5年間:10.90%※3
運用開始:2011年3月29日
保有上位10銘柄は以下のとおりとなっています。
☆VYM
保有上位10銘柄:※2
・Microsoft Corp.
・Johnson & Johnson
・Exxon Mobil Corp.
・JPMorgan Chase & Co.
・Wells Fargo & Co.
・AT&T Inc.
・Procter & Gamble Co.
・Chevron Corp.
・Pfizer Inc.
・General Electric Co.
☆HDV
保有上位10銘柄:※4
・Exxon Mobil Corp.
・AT&T Inc.
・VERIZON COMMUNICATIONS INC
・Chevron Corp.
・Pfizer Inc.
・Wells Fargo & Co.
・Procter & Gamble Co.
・PHILIP MORRIS INTERNATIONAL INC
・CISCO SYSTEMS INC
・COCA-COLA
※2:2017年9月30日現在
出典:https://www.vanguardjapan.co.jp/docs/FS_VYM_JP.pdf
※3:2017年9月30日現在
※4:2017年12月27日現在
出典:https://www.blackrock.com/jp/individual/ja/products/239563/ishares-core-high-dividend-etf
どこも一度は耳にした事があるような企業、そして成熟した企業であるといっても過言ではないでしょう。
なお、保有上位10銘柄においてVYMとHDVで重なっている銘柄には下線を引いてあり、6銘柄がダブっている事がわかります。
ざっとではありますが、以上の事を踏まえ、チャートを見てみましょう。
ここでは以下の銘柄のチャート(ドル建て)を比較してみました。
・VYM(青)
・HDV(水色)
・S&P500=GSPC(紫)
・VTI(ピンク)
リーマンショックの暴落時には高配当銘柄であるVYMの方がS&P500やVTIよりも下落が大きいものの、全体的には相関性が高い事がわかります。
なお、S&P500とVTIはほぼ重なっているくらいに、相関性が高いです。
また、HDVは2011年3月29日からの運用となっております。
次にHDVも運用が始まった2011年から2017年12月28日までのチャートを見ると、全体的にはやはり総じて相関性が高いものの、高配当株式ETFであるVYMやHDVよりもキャピタルゲインがメインのVTIやS&P500の方が株価のチャートとしてはパフォーマンスが高い事がわかります。
そしてHDVは運用開始から2017年に入るまではVYMとほぼ同じチャートともいえますが、2017年に入ってからは青色のVYMの方が水色のHDVよりもパフォーマンスが高い事がわかります。
このチャートだけでも本題である円建てで見た際のVYMとVTIの関係から、楽天VYMと楽天VTIのチャートは大体予想は付くかとは思います。
ドル建てで上述の4本のETFは相関性が高い事から、以下の東証に上場している円建てのETFのチャートを用いて、円建ての際の比較をもとに、楽天VYMと楽天VTIがどのようなチャートとなると予想されるのか、参考にしてみたいと思います。
・1557 SPDR S&P500 ETF
S&P500をベンチマークとするETFであるSPYの円建て
・1589 iシェアーズ米国高配当株ETF-JDR(MS配当F)
HDVの円建て
(1589は上場廃止による繰り上げ償還が決まりました)
→関連記事:証券コード1557 SPDR S&P500 ETFの特徴
1589は2013年12月5日からの運用となっており、長期でのチャートの比較が出来ないのが残念ではありますが、このようなチャートとなります。
円建てでも顕著な右肩上がりの1557とは違い、1589は2015年に入ってからはほぼヨコヨコのボックス圏となっています。
本家HDVは同じ時期である2014年から2017年に到るまで緩やかながらも右肩上がりなチャートとなっていますが、1589とドル/円のチャートを比較してみると、本家HDVの株価の上昇が緩やかな分、1589は為替による影響を受け、緩やかな上昇となっています。
ただし、1589は投資信託ではなく、上場投資信託であるETFであるので、分配金が出ます。
→関連記事においても、本稿においても既に述べましたとおり、投資信託は分配金を出さない場合、一般的にファンド内で再投資される事から、基準価額の上昇が見込まれる特徴があります。
対象指数が違うので、少々こじ付けかもしれませんが、ここで投資信託である上述のSMT米国株配当貴族インデックス・オープンを用いて再度比較してみると、1589(赤)よりも投資信託であるSMT米国株配当貴族インデックス・オープン(青)の方がパフォーマンスが高い事がわかります。
もちろん、1589もまったく上昇していないという訳ではなく、緩やかな上昇という事です。
また、ドル建てではHDVよりもVYMの方がパフォーマンスが良い事からも、VYMの投資信託である楽天VYMは、やはり結果を出しやすく、少なくとも1589よりはパフォーマンスが高いのではないだろうかという結論で終わりとします。
それにしても2018年1月10日からの楽天VYMの運用が楽しみですし、2017年に引き続き、2018年も信託報酬の値下げ合戦や新たなファンドなど投資信託の業界は熱くなりそうな気もします。
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